新たな支援策への疑問及びこれに対する要望(5月17日、中国残留邦人への支援に関する有識者会議に提出)


 今回報道発表された支援策については、残留邦人本人に限定され、しかも生活保護を基準とした給付金をベースにするなど、根本において疑問が多くあります。家族も含めた総合的な支援策が不可欠と考えますが、発表された支援策の中にも以下のような不明な点、疑問な点があります。以下は「不明点・疑問点」につき「質問」として挙げ、更にその点に限定して以下のように要望します。貴会議におかれましては、これらについても十分にご検討いただきたく申し上げます。
  
(※「拉致被害者支援法」では家族単位の支援策で、家族についても年金が支給されるシステムになっている。)

第1 年金満額支給の対象者について
(質問)
 「新たな支援策」の柱とされる「国庫による追納で国民年金(老齢基礎年金)満額受給(月額66,000円)」について、これは、現在、現行の年金制度下で加入期間不足により無年金とされている人、ないしは種々の理由により現行の中国残留邦人に対する特例措置の対象から外され低年金(月額3,000円程度)となっている人、いわば現行の年金制度下で制度の谷間にある中国残留邦人も救済されるのでしょうか。
(質問理由) 
 中国残留邦人の中には、年金のまったくない人、もしくは低年金(月額3,000円程度)の人がいます。中国残留邦人に対する年金特例は、「中国に住んでいた期間は、被保険者期間として保険料免除期間とみなす措置」です。また、生活保護を受給していればこの期間は保険料免除になりますが、加入期間とされます。但し、1981年12月以前の期間については日本国籍を有していた期間のみ対象になり、1982年1月からは日本国籍の有無にかかわらず対象になります。いうまでもなく、国民年金受給資格は60歳までに最低25年間加入することが必要です。そこで、比較的早くに帰国し中国での生活期間が国民年金制度開始から25年を経過していない、(帰国後は就労又は実家の扶助等により)生活保護を受けなかった人で、年金未加入の状態にあった人がいます。彼女らは、年金制度のことを知らずにそのまま来たのです(その多くは自費帰国者です。自費帰国といっても裕福ではなく、実家から借り入れた人ばかり)。また、種々の理由により現行の中国残留邦人に対する特例措置の対象から外され低年金となっている人もいます。なお、中国残留邦人の年金パターンは、別紙1「新たな支援策の概要の読み取り」5頁にあります。

 無年金ないし低年金の状況は以下です。別紙2「残留婦人聞き取り」から挙げます。


(1)無年金の状況
 氏名1は、1978年8月、54歳のときに、永住帰国した(国民年金開始の1961年から17年)。以前に一時帰国したから永住帰国時には国費が出ないと言われ、実家から帰国費用を借りて永住帰国。直後から住み込みで、月額8万円で働く。国民年金制度のことは知らなかった。2年間働いた後、東京に移り、しばらく後から生活保護。
 無年金とされた理由  日本での加入期間不足(自立就労していたが国民年金制度に不案内で国民年金未加入のため)

 氏名2は、1980年10月、59歳のときに、永住帰国した(国民年金開始の1961年から19年)。同じく以前に一時帰国したから永住帰国時には国費は出ないと言われ実家から費用を借りて帰国。実家の農業を2年間手伝った後、東京に移る。国民年金制度のことは知らなかった。東京に移った後は、生活保護を受ける。
 無年金とされた理由 日本での加入期間不足(縁故就職で自立していたが国民年金制度に不案内で国民年金未加入のため)

 なお、この二人は、無年金ばかりか、公営住宅にも優先入居できず(注※)、民間の風呂なしアパートに住んでいる(銭湯代は現在430円)。一人は、現在建替えのための立ち退きを求められているが、老人一人ということで引越し先も見つからない。
(注※「本籍地主義」により定着は帰国した地域であるべきであり、そこから移動したという理由で公営住宅の優先入居がなされていない。しかし、地方では日本語教育などなく、やむなく東京に移っている。二人とも一度も公営住宅の斡旋を受けていない。)

(2)低年金の状況
氏名9は、月額1万円の低年金者である。1974年、45歳のときに永住帰国(国民年金開始の1961年から13年)。帰国後さまざまな仕事をする。1984年から生活保護受給。
 低年金の理由      日本での自立就労期間の国民年金制度に不案内で未加入だったことによる。

 氏名12は、月額3000円の低年金者である。1979年8月、52歳のときに永住帰国(国民年金開始の1961年から18年)。帰国後住み込み等で働く。家政婦で働いている時に、「帰国してからの分は働いて年金を払うから加入させて下さい」と何度も都庁に行った。年金手帳は長野県でもらったのに都庁ではいくら頼んでもだめだった。その後、2ヶ月6,000円(月額3,000円)の通知が来た。
 低年金の理由  中国での在住期間にたいする特例措置が適用されていない。

 氏名14は、月額3,000円程度の低年金者である。1986年、57歳のときに永住帰国(国民年金開始の1961年から25年あるが、後述の事情あり)。帰国後半年は常盤寮(従って、おそらく生活保護受給)で生活し、都営住宅に引越し。1990年子どもが日本国籍帰化手続を行ったが、その際、本人は法務省より、「無国籍である」と告知された。中国では「日本人」として外国人登録もしていたし、永住帰国時は日本旅券での帰国であったのに、である。やむなく帰化申請して日本国籍に。この人は、日本国籍者として扱われていたら国民年金は他の人同様月額22,000円受給できるはずである。だが、1990年に帰化扱いされ、それ以前は外国人扱い。外国人に国民年金が適用されたのは、1982年1月からであるから、彼女が減額されるのは、この事情によるものと思われる。つまり、国民年金開始の1961年から1986年は「合算対象期間(カラ期間)」で、受給資格の期間には算定されるが、この間についてはゼロである。しかしながら、彼女を「外国人」とするのはおかしい。おそらくこれは、「中華民国法による結婚である。当時の旧国籍法で、女性が結婚した場合は日本国籍を失う」という考えに依拠したものと思われる。しかし、彼女が真の意味で結婚したか疑問であり、生きるためにやむなく中国人家庭に入ったものである。しかも、旧国籍法(1950年廃止)は完全に、女性のみ結婚により国籍を失うとされる違憲の法である。
  低年金の理由    外国人とみなされ、中国での在住期間の特例措置が適用されていない。 


(要望)
上記の無年金・低年金の状況のような中国残留邦人が、今回の支援の対象外と想定しているのならそれを撤回し、すべての中国残留邦人に対して、国民年金(老齢基礎年金)が満額支給されるよう要望します。

第2 生活保護受給者に対する住宅扶助・医療扶助について
(質問)
生活保護を受けている者については、特別給付金8万円のほか、住宅・医療扶助をなすとされていますが、これは生活保護上のものでしょうか。この場合、福祉事務所からこれまでのような指示等がでるのでしょうか。例えば、同居はだめである等
(質問理由)
中国残留邦人は高齢化し介護の必要がある状況です。生活保護を受けると、子どもとの同居はできません(収入が合算されるため)。他方、二世自身も困難な中で生活をしています。やむなく別居し、帰国者本人は生活保護を受給しているのが現状です。
(要望)
この住宅扶助等は、生活保護法のものではなく、別のものとしてください。同居でも、二世世帯と本人の収入をわければ可能です。

第3 生活保護の場合配偶者等の分は
(質問)
現在生活保護を受けている場合は、世帯人数がカウントされています(配偶者等)。しかし、この支援策では、中国残留邦人本人のみへの支援です。これでは配偶者等がいる場合は、今の生活保護より低くなります。この場合は、どうなるのでしょうか。
(質問理由)
これらを含めた支援策がないと、結局生活保護になってしまうのではないでしょうか。
(要望)
配偶者への支援が不可欠だと思います。

第4 生活保護受給以外の者への特別給付金について
(質問)
特別給付金8万円は生活保護受給者以外にも支給されるのでしょうか。その場合、支給額は現在の収入を控除するのでしょうか。
(質問理由)
生活保護を受けているものが大半とはいえ、さまざまな理由から、無収入・低収入でも生活保護を受けていない人がいます。
(要望)
彼らにも支給するべきです。

第5 生活保護受給者以外の者の住宅扶助等
(質問)
第4に関係し、彼・彼女らに、住宅扶助・医療扶助は支給されるのでしょうか。
(質問理由)
第4に述べたとおり、無収入・低収入でも生活保護を受けていない人がいます。収入(年金含め)が生活保護受給者より低い、または同程度の人の場合、住宅費・医療費の出費は困難です。
(要望)
生活保護受給者程度の収入しかない場合は、生活保護受給者同様、住宅・医療扶助を支給して下さい。

第6 なぜ、長野県より低いのか
(質問)
今回の支援策は、結果的にみて、長野県の「中国残留邦人愛心使者事業」(月額3万円を生活保護とは別途に支給)より低いものになっています。なぜこれより低いのでしょうか。
(質問理由)
長野県の「中国帰国者愛心使者事業」は、「中国帰国者本人に対して特別な慰藉を行なうための給付金」とされ、これは本来国がすべき施策だとしてスタートしました。このような自治体があるのに、本支援策がこれより低い水準では納得できません。
(要望)
長野県の上記の例があるのですから、これ以上の支援策を考えて下さい。
(80,000円−44,000円)+66,000円(支援策)+30,000円(長野県慰藉分)+住宅・医療等の扶助

第7 本支援策の対象者
(質問)
本支援策の対象者は、現在日本で生活している中国残留邦人本人に限定されるのでしょうか。
(質問理由)
(1)既に、本人が死亡しているが、配偶者が生存している場合、あるいは双方死亡している場合で二世世帯。
(2)特別給付金を受給後、本人が死亡した場合、法定相続人に相続されるでしょうか。
(3)中国で生活している残留邦人。
(4)帰国年度につき、長野県の「中国残留邦人愛心使者事業」では、「国交正常化以後の永住帰国者」+国交正常化前の「1958年の集団引揚終了後に中国から永住帰国した人で、厚生労働省が中国残留邦人と認めた者」とあります。
(要望)
上記をすべて対象にして下さい。

第8 公営住宅への入居を
支援策として、「住宅対策など」とあります。第2に述べましたが、公営住宅に優先入居できない人がいます。その理由は、第2に述べましたとおり、「本籍地主義」の問題です。この二人の他、そういう人たちが多数います。民間でしかも風呂のないアパートで生活しているのです。せめて死ぬまでに公営住宅に1ヶ月でも入居したいという人ばかりです。是非、救済をお願いします。

第9 日本語習得支援、就労支援など受け入れ施策の推進
(質問)
上記は具体的にどのようなものでしょうか。
(質問理由)
本人もそうですが、特に現在(及び今後)は、二世三世に問題が集中しています。とりわけ同伴家族でない「呼び寄せ家族」の場合、一切の日本語教育はありませんし、就労支援もありません。この二つが重なって困難な生活を余儀なくされています。
(要望)
とりわけ、二世三世について、これらの施策を強力に推進してください。

第10 通訳制度の確立
 支援策の中に、通訳制度を確立してください。長野県では「中国帰国者愛心ネットワーク推進事業」で、医療通訳派遣事業を行なっています。中国残留邦人にとって病院にいくことがもっとも大変なことです。介護も同様です。また、役所をはじめ生活に関わる分野での通訳も不可欠です。是非、実現をお願いします。


トップページ  会の紹介  連絡先  スナップ集

お役立ちリンク集!